「真子さん、タキとの楽しい思い出の話してるとき、凄く良い笑顔してる。悲しい思い出ばっかりじゃなくて、タキとの楽しい思い出を思い返せば良い」
「……私、涙腺が弱いから、きっとすぐ泣いちゃう」

 楽しかった思い出を思い返しても、すぐに私はあの頃は幸せだったのに、と思ってしまうだろう。
 あのまま、時間が止まればよかったのにと思ってしまうだろう。
 でも、それでは意味がない気がした。

「この前は俺の前で笑ってたじゃないか」

 ヒロの言葉に、私は少し微笑んだ。

「あの時は、ヒロが笑わせてくれたんだよ」

 一人であきのことを思い出せば、きっと泣くだけだったと思う。だけどヒロが一緒に笑ってくれたおかげで、私は泣かずに済んだんだ。

 そんな私の言葉に、ヒロは微笑んで、

「もしも、真子さんが望むなら、俺はいつでもタキの昔話聞くから。一人で抱え込むな」
「ヒロ……」
「ヨシも、真子さんに会いたがってるよ」

 ヒロの言葉に、私はあきと同じ色の目をしたヨシのことを考えた。目の色だけじゃなく、仕草までどことなくあきに似ているヨシ。

「私も、ヨシに会いたいな……」

 私はぽつんとそう呟いていた。ヒロは私を子ども扱いするかのように、私の頭を撫でた。

「真子さんが元気になれるおまじない」
「え?」

 ヒロはにこっと笑って、

「仕事、頑張れ。きっと誰も、真子さんのこと迷惑だなんて思ってないから」

 と言ってくれた。

「そう、かな……?」
「皆、心配してるかもしれないけど、心配してもらえるだけ得だろ?きっと、真子さんが深く考えすぎなんだ」

 考えすぎなのだろうか?

「もうちょっと、肩の力を抜いて。な?」

 ヒロの言葉に、私はうなずいた。