「こんなところで、何してるの?」
「それはこっちの台詞だよ。こんな遅くに」

 呆れたようなヒロの言葉に、

「うちはすぐ近くだからいいの。ヒロの家は、ここから近いの?」

 私はそう応えた。だけどヒロは顔をしかめて、

「近くても、夜は危ないだろ。真子さんは女なんだから」
「狼に食べられちゃうって?」
「馬鹿」

 ヒロに笑いながら馬鹿と言われて、私は息を飲んだ。

「真子さん?」
「あ、ごめんなさい……あきの言い方に、そっくりだったから」

 私がそう言うと、二人の間に不自然な沈黙が訪れた。

「……俺の実家、タキの家の近くだよ。俺のマンションはここの近くにある」
「そうなんだ……ご近所だったんだね」

 ヒロは苦笑して、

「真子さん、タキのことでも考えてた?」
「えっ……」

 すごく、真剣な顔で私を見た。

「思いつめた顔してる」

 ヒロはため息をついて、私の隣に腰を下ろした。

「はあ、しかしなんとなく公園によってみれば、真子さんがいて、びっくりしたよ」
「なんとなくで公園に来るもの?」

 私の言葉に、ヒロは目を細めた。

「あれ、真子さん言うね」
「え?」

 意味がわからず、私は首をかしげた。

「確かに、真子さんとここで会ったから、ちょっと寄ってみようかと思った」
「っ」

 ヒロが口元に笑みを浮かべながら、そんなことを言った。その姿があまりに妖艶で、私はどきっとしてしまった。