女の子が覗いていたポストのとなりが、自分のポストだ。

ということは、この子は新しくとなりに越してきた子だ。


「303に、越してきた子?俺、となりの302に住んでいるんです」

「あ、そうなんですか?ごめんなさい、挨拶に行かなくて。私、椎名里美と言います」

「全然大丈夫です。今時危ないし。俺、神谷健吾と言います。どうぞよろしく」

自分のポストを確認して、階段を上がる。

女の子も後ろを着いて上がる。

「ここ、エレベーター欲しいですよね」

「本当ですよね。ここ響くし、夜中ここ使うのが申し訳なくて」

女の子がそっと階段を上がっていることに気づいて、自分も足音を抑えるようにした。




部屋の前に着いた。

お互い鍵を取り出し、開ける。

「じゃ、また」

「はい、おやすみなさい」