「知ってる?アリス?この世界に居すぎるとアナタは前の世界のことを忘れてしまうのよ?」
声が響く。
優しそうな女の人の声。
ここにいるのは私とリンだけ。
「リン....声聞こえない?」
「え?聞こえないけど....?」
不思議そうに私を見つめるリン。
え?リンには聞こえてないの?
「リンには聞こえないし、見えないわ。」
私たちの前でふわりと笑う白いワンピースに身を包んだ優しそうな女性。
「私はこの世界の異端。白でも赤でもない。唯一の存在。」
本当にリンには見えてないらしい。
リンはどこか違うところを見つめている。
「白の女王と赤の女王はこの世界で唯一、魔法が使える存在。二人の女王には気を付けなさい。そして....」
優しそうな女性は少し間をあけてこう続けた。
「アリス、アナタの名前を大切にしなさい。自分の世界を忘れたくなければね。」