案の定、まー兄が半分脅しのようなことを言い出すもんだから、暁は苦笑いをしてあからさまに困っていた。



「じゃあ、行ってきます!帰るときまた連絡するってママに言っといて」

「おう。絶対帰ってこいよ。お泊まりなんてまだダメだからな!」

「もう、分かってるってばっ。じゃあ、行ってきます!」



そりゃあ、お泊まりデートに興味がないわけじゃないけど、そういうのは私と暁のペースで進んでいけばいいよね……?



うるさいまー兄を振り払い、私は車の助手席に乗りこんだ。



車に乗った瞬間、ココナッツ系の甘い香りがした。



「甘ったるい匂いするよな。平気か」

「全然大丈夫だよ?お父さんこういう匂いが好きなの……?」

「あぁ。この匂い好きじゃねぇから、あんまり乗りたくねぇんだよ」