いずみさんは月見草を一輪手に取り、その花びらにキスをした。

「いずみさん?」

唖然として見つめる父親とわたしたちを振り返って彼女は微笑んだ。

「かわいそうに。月見草の生命力がとても弱まっている。月の一族とともにある月見草は決して枯れることはない。なのにこんなにも弱々しい。神を失ったせいね」

「君は一体…」

父親が訝しげな顔をするのを横目に、いずみさんはわたしに近づくと持っている月見草を手渡してきた。

「…えっ!?」

いずみさんの小さな手から手渡された月見草は、しおれかかって生気を失っていた。

「美月。あなたにはその花の生命を感じることができる。命の音に耳を傾けなさい」

凛として言い放ったいずみさんの声を合図に、わたしは月見草を見やった。



命の音。


花の息吹。



花の…………生命!!




目を閉じて耳を澄ます。



月見草の呼吸が聴こえる。



月見草の歌が聴こえる。



『アイシナサイ。


愛しいひとをアイシナサイ。


汝の愛は……永遠なり――――!!』