「オレの……『女神』…」

セイジュの瞳が揺れる。

「『女神』は、カナン以外にはいないはずだ」

戸惑いながらそう言ったセイジュに、いずみさんは不敵に微笑んで言った。

「『女神』は二人といない。でも、『月の一族』なら、感じるはずよ」

セイジュは、眩しそうに瞳を細めながらわたしを振り返った。

「……美月が、『女神』だって、ね」

瞳を見開いたままわたしをじっと見つめるセイジュの視線に息ができない。

わたしが女神なんて、そんなはず、ない。

……こんなに、弱くて、ママとパパがいなきゃ何もできないのに……!

しばらくわたしを見つめていたセイジュがスゥッと瞳を伏せる。

そして、顔を上げ、横にいるわたしを見ないまま、まっすぐ前を見て、言った。

「美月、君を信じても、いいか?…オレは、君を信じてみたい」

…………セイジュ……!!

いつかセイジュが言った「不吉な存在」だという2人目の女神。

わたしが、その存在になるかもしれないのに、セイジュはなんの迷いもなく、きっぱりと言い放った。

……女神なんて、自信ないけれど。

わたしは、『月の女神カナン』の娘だ。

セイジュに向き直ったわたしは、とびっきりの笑顔を向けた。

「うん、信じていいよ、セイジュ。『女神』なんかじゃないけど、わたしは、ママの娘だから」

「…美月」

「よろしく、ガードさん」

ふっと……優しげに微笑んだセイジュの顔は、天使みたいだった。