セイジュは噛まれた手のひらをペロっと舐めると目を細めて後ろの保健室のドアに視線を投げかけた。

セイジュは私を引き寄せると息もできないほど強く抱きしめ、少し後ずさりして保健室の壁にぴったりと背中を押し付けた。

あまりの腕の強さに顔をセイジュの胸にうずめながら私は必死にもがいて声を出す。

「セ…イジュ!」

「しゃべるな」

小さいけれども真剣な声。

何が起きているのか全くわからない私の頭と肩を大きな手で押さえつけ、自分の胸に押し付けてくるセイジュに私の思考回路は崩壊寸前だった。

なぜか高鳴る心臓が口から飛び出しそうなほどに脈を打っていた。

微かに…今朝教室で嗅いだ花の香りが漂ってきた。

この香り…あの男の子の!?

今朝教室のドアですれ違った天使の笑顔の少年を思い出した。