その時、もう姿の見えなくなったいずみさんの声が神殿の奥から響いてきた。

「…美月!!月の禁忌を破って生き残った者はいまだかつていないわ!!わたしと紫貴もいずれ制裁を受けるでしょう。でも、美月……あなたなら……きっと―――」

いずみさんの最後の言葉は、崩壊する神殿の轟音にかき消され、泡となった。

「…いずみさん――――――!!」

涙で前が見えない。

月は―――――…………残酷だ。

使命が愛より優先されるなら、“永遠”なんて、いらない。

彼らの名を叫び続けるわたしをセイジュが強引に抱き抱え、神殿の外へと連れ出す。

外に出ると、月は何もなかったかのように、そこにいた。

あまりにも、純真で残酷な、神。



「……セイジュ、聞いて、いい?」

抱きかかえられたまま、セイジュの首に手を回すと、彼の柔らかな髪に頬が触れた。

「…なんだ?」

崩れ去った神殿を背に、わたしは蒼い湖に映る月を見つめ続けた。

「月に還りたくないわたしって、女神失格?永久追放されちゃうかな」

セイジュは、わたしを抱き抱えながらわたしの頬に頭を寄せると、ふっと一息ついて言った。

「いいぜ。それならオレも、永久追放だ」



ママ………、


わたしは―――――………………