ゴゴゴゴゴ……!

神殿が崩れ始める。

ママの眠っている場所も、紫貴といずみさんのいる場所も、崩れゆく神殿の残骸と、砂煙で見えなくなっていく。

「…ママ…ママ―――――!!!」

紫貴はママを抱き上げると、落ち着いた眼差しで振り向いた。

「…美月。生命は本来、儚いものだ。だが我々は、永遠を与えられし者。我々は永遠を与えられた代わりに、永遠に与え続ける者となった。オレといずみにとってそれは、カナンを護る使命であり、闘い続けることだ。美月、君が永遠に与え続けるものは、なんだ?」

……わたしが、永遠に与えるもの……?

微かな月明かりをたよりに、わたしは彼らの姿を目を凝らして見つめる。

だんだんと薄煙に消えていくママの長い髪と、固く閉じられた瞳。

とうとう開かれることのなかったその瞳が見えなくなる寸前、わたしは叫んだ。

「…ママ!!…教えて…わたしは…わたしはなんのために生まれてきたの―――!?」

その時、わたしのすぐ傍の柱が大きな音をたてて崩れ落ちてきた。

「…美月…!!」

セイジュがわたしの体目がけて飛び込んでくる。

抱きかかえられ、気がついた時には倒れた柱のすぐ横に倒れていた。

「…美月、大丈夫か?」

蒼い瞳で真っ直ぐにわたしを見下ろすセイジュ。

「うん、大丈夫。…ありがと」

「行こう、美月。闇の天使といずみは命を掛けてもカナンを護る。それが、彼らの使命だ」

……それが、使命。

胸がズキンと重く痛む。

“愛する人”よりも、優先される使命。