アキトはハルの目をじっと見た。

ハルの目は少し充血していた。


「…それも嘘なんやろ?」

「え?」

アキトはハルの手から紙袋を取り、お弁当を取りだし、ふたを開けた。



…弁当の中身は土まみれだった。


「…誰にやられたん?」

「違うよ!本当に落としちゃったんだって!!」

「お前…俺に嘘が通じるとでも思ってるんか?」

アキトの目がとても怖かった。


…ぐすっ…。


ハルは少しパニックになって、泣き出してしまった。

「ちゃんと話して?」
アキトが優しい口調で問いかける。

「…安藤先輩たちに…何でお前がアキトの彼女なんだって…言われて…お弁当見つけ…られて…地面に投げつけら…れて……。」


安藤先輩というのは、同じテニスサークルの3回生で、前からアキトを狙っていた人だった。



アキトはため息をついた。

最近、安藤先輩とその取り巻きのハルに対する態度がかなりキツくなったのは気付いていたし、それから守ってきたつもりだったのに…。

まさか、ハルにこんな辛い目をあわせてしまうなんて…。


「ハル…。ごめんな。俺のせいで…。」

アキトはハルを抱きしめた。

「アキトは全く悪くないで!!それに、私気にしてないから!!!」

ハルは笑顔をつくった。


ハルのこんな顔見たくなかった…。

アキトに怒りが込み上げてきた。

「俺…ちょっと安藤先輩に話してくるわ。」

「え!?やめなよ!!向こうは先輩やで??」

「このまま黙っているわけにはいかへん。」

そのとき、タイミングよく、ユイが前を通りかかったので、ユイにハルを任せ、アキトは走って行った。