気がつくと、アキトの背中の上にいた。
アキトの後頭部が見える。
「…え!!??なんで!!!???ここどこ????」
ハルが叫ぶ。
「ちょっと!!耳元で騒がんといて。おんぶしてんねんから。」
どうやら、私はアキトを抱き締めながら眠ってしまったらしい。
アキトは私をおんぶしながら学舎の前の坂道を下っている。
「いい!!!重いから下ろして!!!」
「別に重くないで。」
「いいから下ろしてー!!!」
アキトはハルを下ろした。
「…雨上がったな…。ほら、虹が架かってるで。」
目の前には巨大なアーチ。
アキトはしみじみとした表情で言う。
「虹ってさぁ、どんなに走っても、絶対近づけないんだよね。そして、すぐ消えてしまう。もどかしくて、どうしようもないよな。でも、そんな経験を味わいながら、皆大人になっていくんだよな…。」
アキトは微笑んでいた。
そのときのアキトの顔は穏やかで
今まで見た中で
最高の笑顔だった。