雨はまだ降っている。

アキトがゆっくり口を開いた。


「俺なぁ…高校2年のときに家の近所のスーパーでバイトしてる年上の女と付き合っててん。」

「両親は小さい頃に死んじゃって、俺は京都に一人で住んでて、毎日スーパーで買い物してたから、元カノと顔見知りになって親しくなっていってん。」

「元カノは俺の心の穴を埋めてくてたんだ…。」

「俺たちは上手くいってると思ってたんだ。」

「…でも、ある日…朝起きると元カノはいなくなっていて、色々探してんけど見つからんくて…。結局見つからんかった…。」

アキトは下を向いた。

「元カノが唯一の心の支えだったから……辛くて……。」

「よく見るんだよ…。そのときの夢を…。今朝もその夢を見て…。早く忘れた方が良いの…にな…。」

アキトは再び泣き始めた。


雨は止む気配がない。


「アキト…。」
ハルまで泣きそうになったが、涙を堪えて

「うん…。辛かったなぁ…。よく頑張ったね…。」

アキトは震えていた。

ハルはアキトを軽く抱きしめ、頭を撫でてあげた。