春。
満開の桜が咲き誇る。
風に舞って跳んできた花びらに
手を伸ばして、掴む。
手の中には1枚のピンク色した花びら。
ぎゅっと逃がさないように握り締めて。
『夢みたいだったな。どうしてあの時…』
呟きは風の音で掻き消される。
今、私の記憶の中である光景を思い出していた。
あんな体験もう2度とできないだろう。
そもそも漫画じゃあるまいし笑
だけど、確かに存在していたんだ。
戦国、幕末といった2つの時代が混ざり合った不思議な世界に
私は迷い込んで。
そして恋をした。
結末はわかっていたけど
それでも気持ちを止める事はできなくて。
桜の木の幹に凭れ掛かり、
記憶を手繰るように私は目を閉じた。
目覚めたらまたあの世界に
いたらいいのに。
そう祈りながら。