『里衣は、今すごく混乱してると思うわ。
それは当たり前よ。
目を覚ましたら、知らない人が彼氏になっているんだもの。
きっと、里衣の心も脳もこんがらがって疲れてる。
けど、考えてみて。
辛いのは、あなただけ?』
ママがあたしの目をまっすぐに見つめて言う。
思い出すのは、昨日の凌央の無理した笑顔。
きっと、あの笑顔の裏で凌央は泣いてた。
あたしは凌央を傷つけた。
凌央はきっと今すごく辛い。
『あたしだけじゃない、辛いのは…
あたしだけじゃない』
涙が出た。
昨日から、泣いてばっかりだ。
ママはあたしの涙をそっと拭った。
『…そうよね。
凌央くんは、里衣をホントに大切にしてくれてたわ。
その人に、自分との想い出を失くされて辛くない人なんかいないでしょ?』
『…昨日、距離を置きたいって言った…
あたしが…混乱してて…ついていけないから… 辛いから…
凌央は笑った…“大丈夫だ”って…
でも…きっと…泣いてた…。
昨日だけじゃない…
ずっと、ずっと…泣いてたのに…
凌央は… あたしなんかよりも…傷ついてたのに…』
あたしは
何も気づけなかった。