食べ終わって、リハビリから帰ると、ママが来ていた。





『ママ』




『リハビリ、お疲れさま』





『ありがと』




ママがはい、と白い箱を渡してきた。




何かと思って、開けてみると甘い匂いが鼻をくすぐった。




あたしの好きな、苺のショートケーキ。




『買ってきたの。里衣、好きでしょ?』





『うん。大好き!! ありがとね』



あたしは、さっそくケーキにフォークをさして食べ始めた。




ママがためらいがちに口を開く。




『凌央くんのコトは… どうなってるの?』






『まだ何も思い出せない…。

あたしが凌央と過ごした日々も…

凌央への特別な気持ちとかも…』





ママは寂しそうな目をした。





『そう…。 ママは何か言うつもりはないけど…

あなたが苦しいとき

辛いとき

いつも、そばにいたのは

凌央くんだったわ』





『何か言ってるじゃん』





ママは少しだけ口許をゆるませた。




『ごめんなさいね。

それでも… 里衣に分かってほしいのよ』




珍しく、ママが弱々しく話してる。