その夜は、なかなか眠れなかった。




あたしは、どうしたいんだろうか?




別れれば、全てが解決する。



凌央は、きっと何も言わずにあたしの選択を受け入れるんだろう。



“俺のことは気にするな”



って、言うんだろう。




それでも、あたしの中には事故にあう前のあたしがいる。




手放せば、いつか後悔する日がくる。





ねぇ、誰か教えて…



事故にあう前のあたしは

どうしてこんなに凌央を好きだったの?



それほど、大切に思えるくらい二人の間には何があったの…?




だってこんなに、辛い。


失くした記憶は、きっと大切な、幻みたいな儚い記憶…




それなのに、あたしは思い出せない。




その時の、気持ちも…


想い出も…


何もかもを…。





情けなくて

もどかしい


自分が心底、嫌い。





涙が頬を伝う。




何で、あたし泣いてるの?



それさえも分からない。



それでも


涙はとめどなく溢れる。




あたしが泣いてるんじゃない。



大切な物を失くした心が…


泣いてる。