−里衣side−




心に穴が開いてる。




何か、大切な物を失ってしまったような…




それは、本能的に分かる。




あたしが忘れている人。




中島凌央。



事故に会う前、あたしは凌央と付き合っていたらしい。




しかも、中二から。




そんな、長い時間を一緒に過ごした人。




確かに、顔はかっこいい。


周りをとりまく空気はどこか冷たいのに、話してみると優しい。




学校にいれば、モテるな、って感じの人。





あたしをすごく大切に想ってくれてるのも、ちゃんと分かる。





分かっていても、脳は彼との全てを忘れてる。




所詮、そんな程度の気持ちだったのかと割りきってしまえばいいんだと思う。





けど、心のどこかで彼を傷つけたくない自分がいる。




というか、傷つけちゃいけない気がする。





あたしの心の奥にある何かが言ってる。



“彼はあたしにとって、大切な人なんだ”と。




“簡単に切れるような気持ちじゃないんだ”と。




すごく、すごく複雑だ。