俺は、星野を家まで送った。





星野の家の前で立ち止まると、星野が小さな声で問いかけてきた。




『凌央くん、いぃの…?

凌央くん、ホントはまだ里衣ちゃんのこと…』






『いいんだよ。里衣には、もう俺は必要ない。


俺が選んだんだ。 星野は何も考えなくていい。


もう、星野は一人じゃないから』






『凌央くん…』





星野は俺の背中に腕を回した。




俺は、星野の頭をそっと撫でた。




『じゃぁ、おやすみな』





星野が小さく頷いて、俺の体から離れる。





『また明日』




そう言うと、星野は家の中に入っていった。




俺はしばらくそこに立ち尽くしてた。




俺だって、今を見よう。



過去の幸せは、もう無かったことになってる。




でも、俺は大事にしまっておく。

忘れないように、鍵をかけて。





そして、ずっと続いていく今をもっと大切にすればいい。




そうやって、過去を想い出と思えるようになればいいんだ。