イベントは祝日の金曜日と土日の3日間、この辺では一番大きくて高級なホテルの大広間で、新作和菓子の発表会や、琴や太鼓の演奏などが行われる。

私達はお客さんに出すお茶を入れる係。

和菓子を食べてもらう時に出す物なので、おいしくないといけないという事で、事前にお湯の温度や、茶葉の量、手順など細かく指導を受けた。

運ぶのは着物を着たお姉さんが担当なので、私達はひたすらお茶を入れる。

案内状を出した5000人全ては来ないとしても、それに近い人の分を用意しなければならない。

11時の開場と共に沢山の人が入った。

指導を受けたとおりに、丁寧に迅速にお茶を作り続ける。

熱いお湯が手に掛かっても冷やしている余裕なんて無い。

大きな急須にきちんと計った茶葉と温度を確認したお湯を入れる。

砂時計で時間を見て、温めた湯飲みに順番に注いでいく。

ひたすらそれの繰り返し。

重いやかんや急須、立ちっぱなしなのも体にこたえる。

予想してたよりも、ずっとずっとハードだ。

「お疲れ、お茶もういいよ」

コウスケの声で思わずその場に座り込んだ。

気が付けばもう夕方5時。

お昼ごはんも食べてなかった。

アンも同じように座っていた。

「お疲れ!」

2人共本当に疲れていたが笑顔が漏れた。