「アンなんであんな事。ウソでしょ?」

「本当よ。でも男の人がダブった事はないわよ」

アンは無理に笑顔を作って見せた。

その苦しい笑顔にそれ以上聞く事は出来なかった。

高野さんの話は、噂ではなく本人が認めた事実として学校中に広まった。

お決まりの尾ひれが付いて、何回も中絶してるとか、キレた男がナイフを振り回したとかひどいものもあった。

廊下を歩けば、ヒソヒソとアンの話をする声が聞こえ、今までとは違う好奇の目が向けられた。

「アンちゃん、私達は気にしていないから・・・」

舞ちゃんたちは言ってくれたが、あの好奇の目があるせいか一緒には行動しなくなった。

私は常に下を向いて隠れるように歩くようになっていたが、アンは今までと変わらず真っ直ぐ前を向いていた。

「コウ、暫く別々にいよう」

あの隣の子もそうなんじゃないの?そんな声が聞こえ始めた頃、アンは言った。

「何言ってんの?まだアンに運命の人連れてきてもらってないじゃん。それまでは離れないよ」

精一杯明るく元気に言った。

「コウ・・・」

アンの目から一粒ダイヤの様な輝きが零れ落ちた。