「アンの事、頼むな。アンは嫌な奴でも悪い奴でもないから」

そう言った真剣な顔で気付いた。

ああ、コウスケはアンの事好きなんだな。

多分小さい頃から、ずっと。

コウスケの言葉には、長い時間を掛けて積み重なってきた思いがこもっていた。

アンはそれに気付いているんだろうか?

アンが自分以外の人と、付き合って別れてまた付き合って、そんな事を目の前で見てきたんだ。

辛かっただろうな。

「知ってるよそんな事。今度旅行にだって行くんだから」

少しは安心したかな?

「コウー、ごめんねー」

アンが電車から走って降りてきた。

「遅くなっちゃった。あ、コウスケも待っててくれたの?」

アンの言葉に返事もせずにコウスケは歩き出し、私達も後に続いた。