約束した時間の電車からはアンは降りてこなかった。

代わりにこっちに向かってきたのはコウスケだった。

「一本遅れるって」

その一言だけを残してサッサと歩く背中に向かって勝手に口が動いた。

「一緒に行こうよ!!」

思わず引き止めていた。

コウスケは立ち止まり、くるっと回って戻ってきた。

並んでアンを待つ。

引き止めたのは私だけど話す事がない。

なんでこんな事しちゃったんだろう。

電車まだかなー。

次の電車は来る気配も無い。

沈黙が続く。

「悪かったな・・・」

コウスケが沈黙を破った。

「え?何が」

「だから・・・」

唇をぎゅっと結んで、言いづらそうにした。