「うん」


私たちは龍騎に会いに行った


龍騎はロビーにいて「龍騎!!」って呼ぶと


「おぉ!会えたんだな!!

よかった、よかった」


「なんで言ってくんなかったのよ」


「はは、だって言ったらお前行かないって言いそうだからな」


う゛…


確かに言うと思う


「でも言ってほしかった」


「悪い悪い。



で、話があるからきたんだろ?」



「はい、なのでどっか話せるところありませんか?」



「うーん、そうだなぁ…


ちょっと聞いてくるよ


そこにいて」



龍騎は受付に向かった


「あのさ、」


「あ?


何」



「蒼ねぇには会わないの?」


「…うん


俺あんま好きじゃないから」



え…?



実の姉なのに‥?




「実の姉だけどあいつは好きじゃない」


「よくわかんないよ?」


「お前はわかんなくていいの」


嵐はそういって私の頭を撫でた

その時


「何してんの」


と、ものすごい低い声が耳に響いた


恐る恐る後ろを振り返ると


「椎也…」

「柚李、誰そいつ」


「え…あ、「いとこなんすよ」

…」


「そうなのか?」


「うん」


「ふーん、で何してんの?」


椎、信じてないだろうなぁ


でも浮気じゃないから!!


そこだけは誤解しないでほしい…




「あんたに関係ない」


「あ゛?」


うっわ…


何で嵐、挑発する言葉言うかなぁ…


椎めっちゃ不機嫌じゃん


「ってかあんた柚李の何?」


「柚李は俺の“彼女”だ」


“彼女”…

私は恥ずかしくて俯いた


「へぇー」


「んだよ」


「いや、ただあんたが可哀想だなぁ

って思っただけだよ」


「どういう意味だ」





「柚李の事、何も知らないんだなぁ…


って」


「嵐?

虐待の事は言ったよ?」


「いや、その話じゃない


柚李もあとで話す」


「うん」


「知らないってなにを知らないと言うんだよ


じゃあ、おまえは柚李の全部を知っているのか?」


椎也がそう言うと嵐はふっと笑って


「あたりまえだろ」と言って挑発的な笑みをした


椎也はそんな嵐に怒りの限界がきたのか

「てめぇ…」


椎が嵐の胸倉をを掴んで殴ろうとした時


「何やってんだよ」


龍騎が止めた


た、助かった…


あんな椎也見たことなかった


冷静さを失い鋭い目つきで嵐を見て本気の殺気を出して…


初めて椎也を怖いと思った


「嵐と柚李、向こうに部屋があるそうだから行こう


椎也は部屋に戻りなさい」


「「わかった」」


椎、ごめんね


いずれ話すから…



それから私たちは椎が戻ってから部屋に向かった





嵐side



俺は斉藤嵐


柚李の双子の兄


で、今から“あの事”を話すつもり


柚李と龍騎さんに…ー。



――――――――――――――――――――――


10年くらい前のこと

俺の父親の名前は流綺(るき)

母親の名前は亜柚(あゆ)

「パーパ!!マーマ!!」


「なに?どうしたの柚李」


「あんねっ!!あらが虐めてくるの…」


その時の柚は俺の事〈あら〉って呼んでた


「またぁ!?

もう、嵐もやめなさい」


「ごめんなさい」


「まぁまぁ…


嵐、あそこに行くか?」


俺はあそこと聞いてすぐに倉庫だと思った

「うん、行く!!!」と深く頷いた


父さんはそんな俺を見て優しく笑って


「じゃあ、行くか」


「柚も行く!!!」


「柚はめー」

「マーマ!!ゆーも!!!」


「駄目なもんは駄目なの


ホットケーキ焼いてあげるから我慢してくれない?」


「我慢するぅ」


「じゃあ行ってきまーす!!」


「行ってらっしゃい!!」



















母さんの声を聞いたのはこれが最後だった






倉庫にいて龍騎さんと他の幹部の人と話してたら父さんの携帯に着信音が鳴った


電話に出た途端「そ、んな…。わかりました、すぐに向かいます」と言って電話を切った


俺はその時嫌な予感しかしなかった


「どうかなさいましたか?」


「悪いが、今度話すよ


嵐行くぞ」


父さんの様子に気づいたのかみんな何も聞かなかった


俺も父さんについて行きバイクに乗った


着いた先は


病院…


何で?


俺の頭んなかは疑問だらけだった


父さんは急いでバイクを降りて病院の受付の人に聞いていた


『斉藤亜柚(さいとう あゆ)知りませんか!?』


と…



母さんー…?



場所がわかったのか父さんは俺の腕を引いて“手術室”の前で立ち止まった



その時に言われたんだ




「もし、父さんが死んだら

柚李を頼む


おまえの妹だろ?」


その言葉には続きがあったんだ



















「父さんが死んだらー



犯人を絶対見つけろ


母さんの犯人も。


いいな」



俺は頷いた



そうすると父さんは優しく微笑んで頭を撫でてくれた






それから数分後…



手術室から明かりが消えたと同時に中にいた医者が真っ赤な血をつけたまま出てきた



父さんは医者に「妻は!?娘は!?」と聞いた


それに医者は



「娘さんの手術は成功しました


麻酔がきれれば目を覚ますでしょう



ただ…」



俺は幼いながらも分かったんだ
















































『母さんは助からなかった』

















と。



その証拠に医者は「全力を尽くしたのですが…


先程、息を引き取られました。

その前に『子供たちをよろしくね

ありがとう。愛してる』と言っておられました」



医者はそう言って足早にこの場を去った


間もなくして柚李が運ばれてきた


顔の右頬には柚の小さな顔には大きすぎるくらいのガーゼが貼ってあった


「ご家族の方はどうぞ、こちらへ…」


俺たちは看護師さんに案内されて


斉藤 亜柚


と書かれている病室に入った












入って少したつと母さんが運ばれてきた



父さんは母さんを見た途端、「亜柚…亜柚!!!…うぅ…ッ、なんでこんなことに…」と泣いていた



俺も母さんを見ながら静かに泣いた




























“絶対犯人を見つけて復讐してやる”


そう思いながら…









その後、2週間たった時に柚李が目をさました


柚は鈍器なようなもので殴られたらしい


母さんは鈍器みたいなので殴られたあと包丁でお腹とか複数刺されたらしい



よっぽど母さんに恨みがあんのか…?


柚は頭を殴られたせいか事件の時の記憶がなくなっていた


「あら…?パーパ?

マーマは?」

その質問をされた時はなんて答えたらいいか分かんなかった


父さんは「ママはね、どっか遠いところに行ったんだよ」と言っていた


それに柚李は「そーなん!!あいらい…」


“会いたい”


その願いはいつか…叶うと思う


それまで我慢してな?





柚李が退院したのは目が覚めた日の一週間後だった



家に帰ると父さんのお母さんとお父さんがいた


「お袋に親父、何のようだ?」


父さんが聞くとバーバが「嵐くんをうちで預かりましょうか?

…その方が調べやすいでしょ?」