「よし、じゃあ…話すな」
嵐は椎也に話し始めたーー…。
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聞き終わった椎也の第一声は
「…そうだったんだ」
だった。
何か…寂しいのか、怒っているのような複雑な表情をしていた
だから自然と椎也の頭を撫でていた
「…え!?」
もちろん、椎也は驚いていた
それでも私はくしゃくしゃとなで続けた
そうしたら、私が何をしたいのか分かったらしい
私が大好きな笑顔で笑った
それを見た私は満面の笑みを返して撫でるのをやめた
「イチャつくんなら余所でやってくださーい」
「「!!??」」
嵐がいるの忘れてたー!!
恥ずかしっ…////
「…ばっ///べ、別にイチャついてなんか!!」
「照れんでもいいのにー」
「…嵐のバカぁ…////」
照れるわ…
「2人とも顔真っ赤ー!!」
嵐は、ははっと笑ってから
「邪魔者は帰りますね。
あとはごゆっくりどうぞー」
なんて言って、手を振りながら保健室から出ていった
残った椎也と柚李は…?
顔を真っ赤にして固まっていたのは言うまでもない。
その後は、ご想像にお任せします
だけど、ゴニョゴニョはしてませんからね////
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「ありがとう。送ってくれて」
「どーいたしまして
…じゃあ、な」
「あ、うん…」
何か寂しいな…
でも椎也にはそんなこと思っていたのバレバレだったみたいで
「…わっ!」
ぎゅーってしてもらいました
へへ…
椎也にぎゅーしてもらうの好きなんだ!!
だから嬉しくてニコって笑ってから、椎也のネクタイを引っ張ってーー
チュッてキスをした
顔を見ると、もう真っ赤。
それがおもしろくて笑ったらぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、耳元で囁かれた
それを聞いた私はかぁーと顔が赤くなった
「…なっ////」
口を金魚みたいにパクパクさせてると、
ふっと鼻で笑われて、じゃあなと言って奴は帰っていた
残された私はいまだに動けずにいた
椎也に言われた言葉は
『柚ちゃん、今度楽しみにしてろよ?
たっぷり可愛がってやるから』
と甘く囁かれたのだった。
「ただいまー」
「「おかえりー」」
リビングに行くと、そこには
ご飯を作っている蒼ねぇと、ソファーに寝っころんでテレビを見ている嵐の姿があった
その光景がなんだか嬉しくて、自然と頬が緩んでいく
「おなかすいたー」
でもそれがバレないように、おなかをさすりながらイスに座って顔を伏せた
すると、コトっと何かが於かれ美味しそうな匂いがしてきた
ムクっと起きて目の前にある食べ物を見ると
「ハンバーグ!!!!」
叫ばずにはいられなかった
だって、ハンバーグは私の大好物
「どうぞ、召し上がれ
嵐も食べな」
「おう」
「「「いただきます」」」
一口食べると「おいしー」と思わず口に出す程だった
「ふふ、それはよかったわ」
蒼ねぇが微笑んだ姿は実の姉とは思えないくらい綺麗だった
それにつられ私も微笑んだ
嵐はふっ、って笑っただけだけど…
今日は嫌なことがあったけど、何十年ぶりに姉弟全員が揃ってよかった
タイムリミットまで…あと、ーーー。
その知らせは突然だった
~♪
「あ、私だ」
携帯の着信音がリビングに響いた
ディスプレイには<小林 直>の文字
「はい、もしもし」
『柚!?大変なんだよ!!』
「ど、どうしたの?」
直のただならぬ様子に嫌な予感がした
「……実は、桐が、襲われた、んだ」
「……え、」
頭が真っ白になった
桐が?
私たちの次に強い桐が?
「誰に?」
「…赤羽」
ドクンーと
大きく心臓が波打った
「う、そ…」
「嘘じゃない」
直の言葉は至って真剣だった
「そっか…」
「…冷静なんだな。」
「……ねぇ、誰がやったのかわかる?」
「わからない」
そういうことか…
「分かった。今からうちに来て
大至急」
「あ、あぁ」
許せない
絶対に…
ピンポーン
連絡して3分で家のチャイムが鳴った
「入って」
「おー、おじゃまします…」
ひとまず私の部屋で話をしなきゃいけない
「あれ?何でいんの?」
「ちょっとな」
「ふーん、まぁ…いいや
どうせあのことだろ?」
!!
あのこと?
「何だよ、あのことって…」
「え?あぁー、龍蝶の中の誰かが赤羽に襲われたんだろ?…名前までは知らないけど」
何で…
「何であんたが知ってんの!!」
龍蝶のみんな以外は…あと襲ったやつしか知らないはずなのに
「…あ?言ってなかったっけ?
俺情報屋だよ?大知になってやってんの」
「そっか…」
「じゃ、俺行ってくるわ」
「へ?どこに?」
「情報集めに」
嵐はそう言って、ニッと笑った
「俺も詳しいこと話すよ」
「うん。部屋行こ」
なんで、気づかなかったんだろ…
わかってたのに…
警告だってされてた
みんなを傷つけてごめんなさい
「桐は倉庫に行く途中に襲われたんだよ」
「そっか…」
「で、優志から俺の携帯に連絡があって病院に駆けつけたんだ」
「うん」
「それで…桐に誰にやられたか聞いたんだよ」
「そしたら、赤羽って言ったんだね」
「あぁ、そう言うこと」
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『おい!!桐大丈夫か!?』
『あ、直さん!!すいません…俺』
『だぁー!おまえは何も悪くねぇんだから謝るな!!!』
『あ、はい…』
『そうだ…おまえそれ、誰にやられたんだ?』
『………赤羽、だと思います』
『!!?』
『たぶん…そうだと…』
『誰かわかるか?』
『……あ!!確か“涙さんが戻ってこいって”、“まじかよー、涙さんキレるとやべぇから早く行くか”
って言う声が聞こえたんです』
『涙!?嘘だろ…』
『いや、確かにそう聞こえました』
『そ、うか…柚に連絡してくるな
お大事に』
『はい!ありがとうございます!!』
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「そっか…」
「……柚、お前はどう思う?」
「え?私?」
「そうお前」
「……なんか違う気がするんだ」
「やっぱ、そう思うよな。俺も違う気がするんだよな」
「うん…なんか仕組まれてるって感じ」
電話で聞いた時からそう思ってた
椎也赤羽が龍蝶を襲うとは到底思えない。
私は何か重大なことを忘れている気がしてしょうがない
「柚?」
「へ?あぁ…ごめんごめん」
ぼーっとしすぎたみたいだね
「なぁ、椎に聞いてみないか?」
「…………やめといた方がいいよ」
「なんで!?」
「なんとなく、言わない方がいいと思う」
「柚李が言うんなら…」
納得してくれて良かった
一体、誰がこんなことしたんだろう
「うー、今後どうするかね?」
「んー…一人で行動しないのが無難でしょ」
「だ、よなぁ」
ううーん…
犯人を見つける方法なんかないのかな
本人が直接、やったって言ってくれたらいいのに…
~♪
「柚ー電話」
「………」
「柚!!で・ん・わ!」
「おわ!?あ、うん」
電話番号をみると知らない番号だった
出るか迷っていると、「でな」
って言われたから恐る恐る出た
「もしもし…」
「柚李か…?」
受話器の向こうから、この世で一番聞きたくない人の声が聞こえた