そんなあたしの耳に、「新垣ー」とあたしを呼ぶ声が聞こえた。

声がした方を見ると、同じクラスの川崎仁くん。

1年生の時も同じクラスで、男子の中では一番話しやすい。

フサフサのセットされた黒髪で、クシャッと笑う姿は、爽やか少年。

サッカー部で運動もできるから、女の子からは結構人気がある。


「なにー?」

「なんか今日機嫌よくねっ?」

「ぁ、わかる〜?」

「ははっ。これ、担任が新垣にって。今日中に出せと」

「ぁ、ありがとー」


川崎からもらった髪を見ると、


「……げっ」


渡された紙は、進路調査。

忘れてた。

来年、どの大学を目指すかでうちの学校はクラス替えをするらしい。


っといっても……あたしは、将来のこと全然考えてなかったり。