太陽は慌てて玲子を追いかけるが、担任の教師が教室に入ってきたので諦めて自分の席へと戻っていった。


玲子はその様子を見て少しホッとしため息をはいた。


「なあ、玲子。」


玲子の後ろから声をかけてきたのは、玲子の自称彼氏、久我野郷(クガノゴウ)だ。

自称というのは玲子が実際彼氏と認めていないからだ。

玲子は彼氏など特定の関係を持つ者を嫌っている。

郷はそれを理解しているつもりだが玲子を好いているので彼氏と名乗りたいようだ。


「何、郷?」


「また桐谷としゃべってたろ?」

郷はホームルーム中にもお構いなしに玲子を後ろから抱きしめてくる。


「やめて。つか桐谷が勝手に話しかけてきただけよ。」


玲子は郷の腕を叩き落とすようにあしらい、否定した。



「相変わらずつれねぇなあ。まあそういうとこが好きだけど。」


郷は机から身を乗り出して玲子の顔に向けながら言った。


「そりゃどーも。」


玲子は郷の愛の告白を軽く無視して適当に返した。