そしてようやく左隣の人物が視界に映り込み、俺は一瞬、用紙からその人の横顔に視線を移した。


横顔と言っても、黒髪のボブが頬を覆っており、全くと言っていいほど顔のパーツは見えなかった。


ただ、その少女の傷みを知らない黒髪のボブは、蛍光灯の光の下で艶々と輝いており、今まで見た女の子で一番美しい髪をしていた。


それまでの一番は、当時4才だった従姉妹の長い髪だった。


自分のクラスには、比較的ギャルが多いせいか、黒髪すらまともに見かけることが少なかったので、俺は暫くその艶やかな髪を眺めていた。


そう、俺は黒髪が好きだった。


それも染髪ではない、生まれもっての純粋な黒髪が。


清楚なイメージに好感をもてるからなのか、自分の毛色にコンプレックスがあるからなのか、その両方なのかはわからないけれど。


時間の許す限り、俺はその髪をこっそりと見つめ続けた。


周りには多分バレていなかった、はず。


彼女が体を揺らす度に、その繊細な毛先も揺れ、目に見てとれるさらさら感に、無意識に手が伸びそうになる。


フェチだとかそういうのではないんだ。


そうしたいと思わせるほどに、彼女の髪が魅力的だっただけなんだ。