ギャルである橋田さんの友達、山岡さんは、やはりギャルだった。


「どうする?」


「どうするって?」


「私の時みたいに断る?それとも」


「付き合う?」と、彼女は左手でオッケーサインを作って俺に見せてきた。


口元だけの笑みが、女性特有の嫌みを放っているのがわかった。


「……山岡さんが告白するかどうかなんてわからない」


「もししたとしたら?」


ずるいというか、彼女は姑息な女だった。


こんなのは一つのパターンで、きっと彼女は他の手段も駆使して、俺に近付こうとする女子生徒を葬ってきたに違いない。


「……今は誰とも付き合う気ないから」


そう答えれば彼女は満足げにニヤリと口を歪めた。


「だよね」


俺の回答が、さも当たり前だと言わんばかりの、口振りだった。


人のせいにするのもなんだが、彼女のせいで俺は、恋愛に対しての奥手振りが増幅したように思う。


中学時代、もし俺が千良のような(彼については後々詳しく説明したい)チャラチャラしたナンパ師だったとしても、この橋田さんにつきまとわれている以上、誰かと付き合おうだなんて考えなかっただろう。


ましてや初恋の相手なら尚更。