目の前の大きな岩を越えると、悠月が勢いよく抱きついてきた。

「悠月! 無事だったか」

「みんなあ、春風ちゃんが」

恐怖に震えているが、けがはなさそうだ。

「春風ちゃんがあたしをかばってくれて・・・悪魔に。でっかい悪魔だった。こーんなで、すっごい怖くて」

悠月ちゃん! あなただけでも逃げて、みんなと合流するのが正解よ!

「でも大丈夫!
殺すなって、言ってたから、春風ちゃん無事だよ!」

陸が冷静に引っかかった。

「殺すなって言ってた? 悪魔はふたりいるのか?」

「うん、春風ちゃんを連れていったのと、姿は見えなかった、声だけのがいたよ」

陸と健介が目を合わせる。

「姫も怖がるでっかい悪魔と、それに指示を出す悪魔・・・」

「もうビビってもしょうがねえだろ! とにかく春風を探すのが先だ!」

哲平はキラアームに手をかける。

「その必要はない。娘は私らの手元におるよ」

「お嬢ちゃんうまく逃げたようだな。
お友達と一緒に城で待ってるぜ」

地の底から出るような魔王らしい低い声と、軽い口調に似付かない重厚な声。

四人はもう一度、勇気を奮い立たせるように頷いた。

絶対離れないよう約束しあい、再び駆け出す。