全速力で向かった先は、近くの映画館だった。


「亜魅っ!!」


 亜魅と呼ばれた天然パーマの女性が、整えられた眉を吊り上げて、勢いよく振り返る。


「何時だと思ってんのよこの馬鹿!!」


 男性は、即座にその場に正座した。


「"10時に待ち合わせ"って言ったのは何処のどいつよ!?」

「…俺です。」


 うなだれる男性に、女性は噛みつくような勢いでまくしたてる。


「なら今は何時!?」


 虚ろな目で、丁度近くにあった時計塔に目を向ける男性。


「…1時ジャストですね。」

「…私は30分前に此処へ来ました。さて此処で問題です。私はどれだけ待たされたのでしょうか!?」