ブラックホールの目の持ち主…もとい、七谷歌誌葉は、俺等負け犬の正反対の存在である、勝ち猫だった。


───てか猫って。


 昨日は、歌誌葉の話題になったとたんテンションが上がりだし、止まらなくなった佐吉を皆で止めた後、真怨のテントで話の続きを聞いた。

 どれも有り得ない話だった。

 まず、此処は本当に雲の上に存在しているということ。

 マケイヌの雲は治安が悪く、穴が沢山開いていた(俺はその時も絶叫した)。その上に被せている蓋を外すと、雲の下、つまり、地上の様子が窺えるのだ。

 そして、負け犬を卒業して勝ち猫にならない限り、人間の生死のサイクルに入れないこと。

 また、負け犬の教育係りに任命された勝ち猫も、それと同様であること。

 簡単にまとめると、死んだ負け犬は、天国で勝ち猫に教育されて、勝ち猫になるまで新しい人生を送れない、ということだ。

 明らかに俺より年下の歌誌葉が教育係なのは少々シャクだが、可愛いから許すことにした。

 昨日はその事ばかり考えていて、気付いたら夢の中に居た。