「…大事なことを忘れるでない、佐吉。お主、まさかわしらが皆でこうして共同生活してるのには、ちゃんと訳があることを、忘れた訳ではあるまいな?」
それまでずっと沈黙を守り続けていた舞花が、敢えてなのかそうでないのか、暗い声で口を開いた。
「忘れてへんわ。今から言うとこやっちゅうねん。」
うんざりしたような顔で、ショックを受けている俺の顔をチラッと見ると、さっきと同じ調子で、再び口を開いた。
「ほんでや。人間っちゅうやつは、此処に来てしばらくしたら、また新しい人間になって、人生を終えたら、また此処に来て…ってゆう、要するにローテーションしてる訳なんやけど、俺等は、残念なことに負け犬や。このままやと、次新しい人間になっても、また負け犬で終わってまう。そこで!」
急に声のトーンが上がった。
「俺の愛娘にして、カチネコの雲の上から派遣された、七谷歌誌葉に協力してもらって、マケイヌ卒業の修行中な訳や!」
急に立ち上がって決めポーズをした佐吉は、達成感と愛情に溢れた、何とも言えない顔をしていた。