出逢いは運命。
大荒れの天気の中、オレは1人で仕事に出かけた。
依頼内容はかなりキツイ。
瀧口組の組長·若頭の暗殺。
及び、組員の壊滅。
『仁、頼んだわよ!』
母親代わりのボスから直接依頼を受けた。
断れるハズがない。
ボスはサポートを何人か付けると言ってくれたが、断った。
オレはチームは組まない。
一人前になった時からそのスタイルは変わらない。
銃にサイレンサーを付け、入口に待機する組員を殺った。
両手に銃を持ち、撃ちまくる。
かなり広い家だったが、組長の部屋の前まで難なく進んだ。
部屋の中からは暴れているような音がしていた。
襖の隙間からそっと覗いてみる。
子供が暴行を受けていた。
瀧口組は協定を破ったことで周りを敵に回したが、組長まで腐った奴とは思わなかった。
子供は身体を丸め、必死に耐えている。
『クソがっっ!』
襖を開け、一発だけ弾を放った。
後頭部から眉間を貫く。
ゆっくりと組長の体が倒れた。
組長が撃たれたことに気付いた子供が立ち上がり、オレを見た。
黒目がちの大きな瞳が印象的で、視線が外せない。
その瞳から一筋の涙が流れた。
『――殺さないで』
無表情で言われた。
驚いた。
普通はもっと泣き叫んだり、懇願したりするものだが……。
仕事を見られた場合、ターゲットでなくても口を封じる為に殺す。
組織の掟だ。
『お前はリストに入っていない。何処へでも好きな所へ行け』
感情を抑えて、答える。
初めて自分以外の人間に興味を持った。
この子はどんな人間になるのだろうか。
いつ死んでもいいと思っていた生き方が、変わった瞬間だった。