台風が近付く大荒れな天気の日、アタシはアナタと出逢った。
名は仁(ジン)。
最強の暗殺者。
アタシは自分の両親の顔を知らない。
物心ついた時にはここ、瀧口組にいた。
瀧口組の組長の妹がアタシの母親にあたる。
母親はアタシを産んだ後、行方をくらませた。
幼い頃は大事にされていたように思う。
だけど中学校にあがる頃から、暴力を振るわれる毎日が始まった。
暴力団の事はよくわからない。
ただ、親代わりの組長がおかしくなっていることはアタシでも理解できた。
組同士の抗争が激しくなりだした頃から組長は酒浸り。
所謂アル中だ。
酒を飲んでは怒鳴り散らし、気絶するまで暴力を振るう。
誰であろうがお構いなしだ。
アタシはそんな毎日に絶望していた。
その日も。
いつ終わるかわからない暴力に、身体を丸めて耐えていた。
「パスッ!!」
音がすると同時に、暴力が止まる。
少し間を置いて組長の体が倒れる音がした。
顔を上げると、眉間に穴が開いた組長が倒れている。
振り返るとそこに、拳銃を持ったアナタがいた……。
『――殺さないで』
無気力だった私の唯一の願い。
吐き捨てるようにアナタは言った。
『お前はリストに入っていない。何処へでも好きな所へ行け』
その日からずっと、アタシは仁と一緒にいる。