「瑠美とは顔くっつけてたんじゃなくて、オデコくっつけてただけ。それは本当に軽率だったと思う。瑠美に『ちょっと顔下げて』って言われて、なんとなく下げてしまいました、すいません。

 キーホルダーは、本当にたまたま。体温計探してる時に見つけて、なんも考えずにポケットに突っ込んだ。本当にそんだけ。いつも持ってたわけじゃなくて、むしろ1年振りにお目に掛かった。

  『関係ない』って言ったのは、みんなの前で瑠美を『振られる女』にしたくなかったから。みんなの前で言う事じゃないと思ったから」

 サヤ子は俺の胸の中で黙って俺の話に頷いた。

 「キスして泣いたのは・・・俺、瑠美の事大好きだったけど・・・でも、俺・・・本当に今までサヤ子以上に好きなった人っていないんだよ。瑠美の事、大好きだったのに・・・幸せに出来なくて、やっぱりサヤ子を好きでい続けて・・・悔しくて、申し訳なくて、情けなくて・・・泣いた・・・のかも。俺にもよく分かんない」

 「・・・そっか。翔太ゴメン。寝よっか。翔太の息、熱い。風邪ひいてるのにゴメンネ」

 鼻を赤くしたサヤ子が、俺を見上げて微笑んだ。

 「・・・納得した?? サヤ子」

  「・・・私はね。風邪治ったら、桜井先生にも話そうね」

 サヤ子が俺の手を引き、ベッドに連れて行こうとした。

 その手を引っぱって後ろから抱きしめた。

  止まんない。止まんない。つーか、止める気もない。