朝倉先生はサヤ子と談笑した後、本当に5分後に帰って行った。
サヤ子は朝倉先生と一緒に帰りたがっていたが、朝倉先生に『追って欲しくて逃げるフリする女は共感するけど、目の前でやられると不快』と怒られて留まった。
・・・どっちが年上なんだか。
「良かったな、サヤ子。 朝倉先生と仲良くなれて」
「『優たん』だよ♫」
サヤ子の肩に手を置くと、サヤ子はついさっきキレられていたというのに、嬉しそうに『ふふふ』と声を漏らして笑っていた。
よかった。これで一件落着-----
「よし、じゃあ私も帰ります」
----ではなかった。
スッキリした表情をして、玄関に行こうとするサヤ子。
「は?? なんで帰んの??」
咄嗟にサヤ子の手に持たれていた鞄を奪う。
さっきの朝倉先生とサヤ子の会話を盗み聞き(つーか普通に聞こえた)してたから、サヤ子は帰るの止めて欲しがっているのだろうと思ったが、
「返して下さい」
どうやら本当に帰りたいらしく、さっきまでホクホク顔だったサヤ子が、全く笑うことなく俺に『鞄をよこせ』とばかりに手を前に出した。
「サヤ子、敬語はペナルティ」
冗談っぽくサヤ子のオデコを軽く叩くと、サヤ子の目に涙が溜まった。
「ごめん、そんなに強く叩いたつもりじゃなかった。痛かった??」
慌ててサヤ子のオデコを撫でると、サヤ子はスッと顔を背けた。