それを、瑠美が嬉しそうに拾い上げた。

 「このキーホルダー、まだ持ってたんだ」

 サヤ子の目がそのキーホルダーに留まる。

 サヤ子の視線に気づいた瑠美が、サヤ子にキーホルダーを見せながら笑いかけた。

 「これ、去年2人で旅行に行った時に買ったんですよ。ダサイのは分かってたんですけど、何か記念になるものが欲しくて・・・」

 瑠美が俺に『懐かしいね』と笑顔を向けた時、何て返してよいのか分からず『うん』と答えてしまった。

 ----桜井先生との思い出を知って嫉妬したくない。

 サヤ子が嫌な気持ちになることは分かっていたのに。

 「おもしろい形だね、安田」

 サヤ子は俺とは目を合わせてくれず、ただただダサイだけのキーホルダーをマイルドにフォローすると、安田にだけ同意を求めた。

 「・・・うん。逆にオシャレかも。1周して最先端かも」

 安田の無理矢理な共感は、逆に『ダサイ』を強調してしまっていたけれども。

 そんな事より、俺をシカトする様なサヤ子の態度に少し腹が立った。

  「・・・私、帰ろうかな」

 サヤ子が自分の鞄を拾うと『じゃあ、俺も』と安田はサヤ子の鞄をさりげなく持った。

 俺の目の前で繰り広げられる『いいよ、自分の鞄は自分で持つよ』『いいから、いいから』等というサヤ子と安田の馴れ合いに、腹が直立した。

 「なんで帰んの?? 何なんだよ、サヤ子。何、今の。当て付け?? 言いたい事あるなら言えばいいだろ」

 言いたい事を何も言えずに、サヤ子の誤解を何一つ解いてもいない俺のブチ切れに、驚いたサヤ子と安田がピタっと動きを止めた。

 




 「嘘吐き」