「あ、熱何度だった??」

 サヤ子が、ゼリーを持っていた左手にスプーンを挟み、右手で俺の額に触れた。

 「体温計が見つかんなくて計ってない」

 「じゃあ、アパート戻って取ってくるよ」

 サヤ子が、ゼリーをテーブルに置いて立ち上がった。

 「待って、どっかにあるんだって。 瑠美がどこかに・・・」

 体温計を取りに行くだけですぐ戻って来るって分かってるのに、サヤ子を帰したくなくて咄嗟に出た言葉がこれだ。俺、阿呆すぎてホント嫌。

  「・・・そっか。どこに片してあるんだろうね」

 サヤ子が苦い顔で笑った。

 「・・・確実にどっかにあるから、適当に棚開けて見てみて。あ、あそこに引き出しには無かった」

 挙句、サヤ子に探させようとするし。

 俺、何がしたいんだろう。

 「・・・体温計はいいや。翔太だって、他人に色んなとこいじられるの嫌でしょ」

  「他人って・・・」

 サヤ子の突き放した様な言い方が引っかかる。

 「いくら付き合っていても、うちらは他人でしょ?? まぁ、他人じゃなくてもプライバシーは守る主義」

 サヤ子はテーブルに置いたゼリーを手に持つと、またスプーンで掬った。