「こんな時、世間のカップルは『ワタシがその風邪もらってあげる』とか言ってキスするもんですよ??」

 サヤ子に向かって唇を突き出してみたけれど、

 「私が翔太の風邪をもらって自力で治すの??」

 サヤ子は『何わけ分かんない事言ってんだ、コイツ』とばかりに、呆れた顔を俺に向けた。

 「サヤ子が風邪ひいたら、俺がもらうし」

 「風邪移し合ってないでちゃんと治さないと、ずっとどっちかが風邪ひいてるって事じゃん」

 サヤ子が若干面倒臭そうな表情をしながら『そろそろエアコンつけよっか』と言って窓を閉めた。

 「薬飲みながら風邪移しあってれば、そのうち消滅するでしょ」

 「・・・その話はまだ続くのかな??」

  完全に面倒くさくなったサヤ子は、テーブルに出したみかんゼリーを冷蔵庫に入れるべくキッチンへ行こうとした。

 「待って。今食う」

 サヤ子を呼び止めると、サヤ子がゼリーの蓋を開けて俺に手渡そうをした。

 「サヤ子、あーん」

 「・・・翔太、めんどくさい」

 ついに『めんどくさい』と口に出したサヤ子は、そう言いながらもどこか嬉しそうスプーンでゼリーを掬うと、俺の口に運んだ。

 てゆーか、これくらいのラブラブさがあってもいいでしょーよ。