そらはいつだってそう。肝心なことを教えてはくれない。


もどかしくて、歯痒くて

私の心を締め付けて、暴れだしたくなるような衝動を掻き立てられる。

そんなの……もう嫌だ。


「最後くらい、そらの本当の気持ち聞かせてよ──」


そらへの想いは届かない。

柚くんにだってきっともう逢えないだろう。

ずっと前からわかっていたのに、私はそれを認めたくないだけだったんだ。


もうこれで最後。

そらへの想いと一緒に、柚くんへの想いも封印するから

せめて最後に、その隠れた心の内側を覗かせて──。


二度目の恋におちた、かけがえのないキミのことを、何も知らないまま終わらせたくはない。


すると、そらの足が一歩近付いたのがわかった。

感じる気配に、固く閉じた瞳を開いて顔を上げる。


さっきの苦しげな表情とは違う、何かを決意したような真剣な顔のそら。

澄んだ瞳に魅了されて、引き付けられた視線は逸らせない。


「……瑛菜」


──初めて名前を呼ばれ、大きく心臓が跳ねた。


ドキン、ドキンと

耳の奥で響く鼓動だけを感じていると、ふいにそらの手が私に伸ばされる。

涙を拭うように、細く長い指が私の頬に触れようとした、その瞬間。