卒業式は無事に終わった。
私と乃愛は人の目もはばからず
ずっと泣き続けていた。


「志祐梨、乃愛。」


後ろから、何度も聞いた
声変わり後の声がする。


「…なつきぃ…ばかぁ…。」


意味の分からないことを
那月の肩を叩きながら話す私。
普通はおめでとうとか
言わなくちゃイケナイのに…。
見せられたもんじゃない
くしゃくしゃの顔を
隠すように、手で覆う。

「なっちゃ~ん…。」

情けない声で乃愛が言う。
泣き顔までも可愛い乃愛が
すごく羨ましい。

すると、那月は
私たちを軽く抱き寄せた。


「じゃあ、またな。」


片眉を下げて笑う那月。
急に早くなる鼓動。
頬に上る熱。

間違いなく、私はこの時
恋に落ちていたことを
自覚したのだ。