気が付いた時には、
目の前に那月の顔が迫っていた。
両腕を本棚に押し当て、
逃がさないようにしている。
「…な、にを…?」
_ホントは分かってる。
「分かってるくせに。」
那月だけ、余裕そうな瞳で
こちらを見つめる。
「どいて。」
_嫌じゃない、むしろ…。
「っふ。」
っこいつ!鼻で笑った!
顔に血液が回り、
赤くなっているのが分かる。
「…ほら、返す。」
『君にゴールイン!』で
頭をたたかれる。
「…馬鹿…。」
本を受け取り、俯く。
こんな事言うのは初めて。
今まで、兄妹みたいに
接してきたから、
正直、戸惑ってる。
この、早く叩かれる鼓動に。
意味を見いだせたのは、
那月の卒業式の日だった。