春休みが明けて新しい学年がスタートするこの日は、いつもと違う朝だった。
「凛太ぁー起きなさーい」
「うぅ……今日、はやいよ…」
「隆くんが来てくれてるんだから仕方ないでしょ?」
「りゅーくんっ!?」
隆くんの名前を聞いて反射的に飛び起きる僕。
お母さんはそんな僕の様子を見て少し驚いたみたいだった。自分でも驚いたけど。
「待たせてるんだから早くね」
それだけ言ってお母さんは部屋から出ていった。
僕は素早くベッドから降りて着替えに取りかかる。
ちょうどその時、何の前触れもなくドアが開いた。
「おはようりんた!」
「りゅうくんっ!!」
「急げよお前、今日は俺の初登校なんやから!」
言われて気づく。
この前引っ越してきたばかりなのだから当たり前といえば当たり前だが、今日は隆くんにとって記念すべき日なのだ。
隆くんに急かされながら自己最速ではないかという速さで準備と朝食を済ませ、一緒に通学路を歩く。
ふとバッジを見ると、自分のと色が違った。
「ねぇねぇ、りゅうくんは今年で何年生?」
「俺? 俺は今年6年生やな! りんたは?」
「僕、今年で4年生」
「えっ!お前って俺の2コ下やったん!? ビックリしたわ」
自分からしたらまぁ隆くんは年上だろうなぁとは思っていたのでさほど驚きはしなかったが、6年生の隆くんに驚いてもらえるなんて嬉しかった。
「お前4コ下やと思っとったわ」
前言撤回。
こんな失礼極まりないことを言ってケタケタ笑っている関西野郎の精神年齢より絶対に自分の精神年齢の方が上だと思った。