隆くんと家が隣同士だと知ったので、安心して「また明日ね!」と手を振った。

玄関を通り抜け、お母さんが居るキッチンに駆け込む。一刻も早く今日のことを知ってほしかったから。


「お母さんあのねっ、」

「ただいま、でしょ?」

「ぁ、ただいま…」

「おかえり。どうしたの?」

「あっあのねっ、今日、ともだちできた!!」

先ほどまでの出来事を、まだ少し拙い口調で興奮気味に説明した。
するとお母さんは何か思い当たったらしく、「あぁ」と声を漏らす。

「今日隣に引っ越してきた子ね?」

「うんっりゅうくん!」

「そう、お母さんね、隆くんのママとお友達だったのよ」

「ほんとにっ!?」

衝撃の新事実につい声が大きくなってしまう。
お母さんは構わず続けた。

「ほんとほんと。大学で同じサークルだったのよね確か」

ここでふと思い浮かんだことを何故かドキドキしながら質問する。

「お母さんたち、仲良しだったの…?」

「そうよ~懐かしいなぁ」

あっさりと肯定するお母さんがどこか羨ましくて、また違う質問をしてみる。

「ぼ…僕もりゅうくんと仲良しになれる、かなぁ?」

実際声に出してみると案外恥ずかしいもので、少しもじもじしてしまった。
そんな僕を見て、お母さんは顎に手を当てて考える素振りをした後、いたずらを思いついた子供のように笑った。

「うーん……じゃあ今度一緒に遊びに行こっか!」

「うんっ!!」

そんなわけで鈴木家と水瀬家の家族ぐるみでのお付き合いが始まった。