寝ようにも寝れない。
ふぅ、戻るか。
脱走してきた道をとぼとぼ歩く。
時計塔の横を通り過ぎるとき、
パシャ
ついさっき聞いたばかりの、機械的ではありながらも生きてるようなそんな音。
やっぱり。
でも、姿に気づいたのは俺だけ。
彼女はカメラ越しに時計塔をじっと見つめてる。
あれ、あんな顔だったっけ?
フフッと笑った口元は面影もなく、真一文字の閉じた唇は震えてるようにも見える。
なにか声をかけようとするのだけれど、言葉がでてこない。
「おーい!」
その声のほうを彼女は振り向く。
俺は彼女越しにその声の主を確認。