いつも通りの日常がこれからも続くと思っていた。
明日もあさっても咲や瑞穂と他愛のない話しをしながらお昼を食べて、人並みに恋を楽しんで…。
あの夢は、ただの夢だと思っていた。
夢の中で、彼女に会うまでは。
―――――
湖のほとりには悲しそうな顔をしてゆかりを見つめる人があった。
しゃがみ込んで湖に手を触れても波紋が出来るだけ。
「ゆかり…、また会いに来てね」
纏った衣は豪華な模様を描き、身の丈よりも長く美しい髪をもったその人は、湖に背を向けて歩き、そのうちに御簾の向こう側へと消えた。
―――――――
「どうかした?」
急に天井を見上げたゆかりに咲が声をかけた。
「ううん、なんでもない。なんか呼ばれた気がして…」
「気のせいじゃない?」
「…そうだね。」
“また会いに来てね。”
そんな言葉が聞こえた気がした……。
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