「ゆかりってば!」



目をあけるとよく見知った咲の顔があった。



「あ、起きた。」



声のする方を見れば瑞穂がお弁当の卵焼きを口に運んでいるところだった。



「もーゆかり熟睡しすぎだよ…」



咲がため息をついて席に座って弁当箱を広げる。



「…ごめん。そんなに寝てた?」


「私が見たところ5分くらいだったけど熟睡って感じだね。先生に当てられなくてよかったね。」


「そっか…」



冷静に説明しながら一人マイペースに食事を進める瑞穂と、困った顔をしている咲を交互に見た。






…ただの夢だよね。


最近よく見るだけの、ただの夢。


開きっぱなしの教科書には、古文の授業でやっている源氏物語の桐壺の巻。


挿し絵に平安時代の建物が描いてある。


きっとこれを見たからあんな夢になったんだ。


教科書を閉じて机にしまった。




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