「……ゆかりが来てる。ここの事はまだ何も話してない。お前のこともまだ何も。」
「わかりました…」
目の前で交わされる意味のわからない会話は、ゆかりの耳には少しも入ってこなかった。
入ってくるのは藤壺と呼ばれた女性の声だけだった。
…似てる。なんだか自分の声みたい。
……誰?
灯りが差し出され、ゆかりの目の前に藤壺が腰を下ろした。
ゆらゆらと揺れる灯りの中、お互いの顔がはっきりとわかった。
漆黒の瞳、桜色の唇、柔らかい表情………二人の顔立ちはまるで双子のようによく似ていた。
ゆかりが小さく息を飲み、呟いた。
「……え………私が…いる?」
「はじめして…藤壺と申します。時の国へようこそいらっしゃいました……」