「源氏の…あいつのことね……」
「…………あっ?!…一輝くん、猫から人に………」
「遅…。そんで俺は、一輝じゃないから。どう見たってあいつとは違うだろ」
男は目の前のゆかりの身なり、顔、身体、全てを眺めてため息をついた。
似てるな……。
似てるなんてもんじゃない、ほとんど生き写しだ。
艶やかな黒髪、大きな漆黒の瞳、桜色の唇、顔立ちはほとんど藤壺そのものだ。
「え…一輝くんじゃないの?……これって、ただの夢だよね?」
ゆかりは現状を把握しようと周りを見渡した。
満月を映した湖の水面、一面の緑、建物。
以前と同じ景色に加えて、湖のほとりに桜の木や橋が出来ていた。
いつもの夢の中であることは間違いない。